中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)、中心性網膜症、中心性網膜炎に対する治療 中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)とは ●呼び方 中心性網膜症(ちゅうしんせいもうまくしょう)とか、中心性網膜炎(ちゅうしんせいもうまくえん)などと呼ばれることもあります。炎症が起きているわけではないので、中心性網膜炎という呼び方は厳密には正しくないと考えます。 英語では central serous chorioretinopathy なので、プロの間でははCSC(しーえすしー)と呼ばれています。 ●多い年代、性別など 30代から50代の男性に多い病気です。通常片眼に起こりますが、稀に両眼に時期をずらして起こる人もいます。同時に両眼に起こることはさらに稀ですね。 ●原因 働き盛りの男性に多いので、それと単純に結びつけて仕事のストレスが原因などといわれていますが、あくまで推定であり、ストレスとの因果関係は臨床の現場では正直はっきりしないです。 ステロイドが原因とも言われていますが、これもどうでしょうか。少なくとも私が今まで見た中ではステロイドを使っている人が多いということは全く無かったですが。 病気になると、何かに原因を求める患者さんがほとんどですが、病気のほとんどは原因がないものです(例えば、タバコもすわないのに肺がんになった、とか・・・)。なので、この病気になっても自分の生活や仕事のストレスを責めることはないですよと患者さんに言ってあげたいです。 自分も含めて、この世代の男性で仕事や家庭のストレスなしで生きている人なんて全くいないですから。 ●目が構造的にどのように変化するか(ややプロ向け) 網膜色素上皮層と神経網膜の間に水がたまる、中心部に限局した網膜剥離である、と記載されているのをネット上ではちょくちょく見ますが、私は正しくないと考えます。 眼底は上から、神経網膜(半透明の白)、網膜色素上皮層(濃い茶色、透明度なし)、ブルーフ膜(ごめんなさい、見たことがないので色はわからないです)、脈絡膜(血管や水分だらけの層です)という層に分けられます。 正常の眼底は、茶色の網膜色素上皮層の上に半透明の白い神経網膜がぴったり張り付いているので、うすい茶色〜オレンジ色に見えます。 例えば・・・ 網膜に穴があいたら(網膜裂孔)、穴の部分は網膜色素上皮層が露出するので茶色く見えます。 そこから網膜剥離裂孔や網膜剥離になると、神経網膜が網膜色素上皮層からはがれるということなので、はがれた部分は白く見えます。 網膜剥離、すなわち、神経網膜が網膜色素上皮層からはがれるという病態に関しては、このような色の法則があるわけです。 中心性漿液性網脈絡膜症OCT(網膜の断層写真)をさらっと見ると、神経網膜と網膜色素上皮層の間に水がたまっているように見えますが、よくよく見ると、網膜色素上皮層の下に水がたまってはがれているのがわかります。また、中心性漿液性網脈絡膜症の眼底は、はがれている部分は白ではなくて、むしろ色が濃く見える場合がほとんどです。 なので、中心部付近の神経網膜の下の網膜色素上皮層のさらに下の層(ブルーフ膜)に謎の問題が偶然に起きて、さらに下の層(脈絡膜)にある水分が網膜色素上皮層とその下の層(ブルーフ膜)の間に染み出してきた状態、というのが正しいのではないでしょうか。こう記載されている教科書もありますし。 余談ですが、OCTなしでそれを見切った昔のごく一部の先生の診断力はほんとうにすごいもんです。自分らは最新の機器をあっさりと使って、いかにその機器の情報を裏の裏まで見切るかで勝負しています。現代的に大事なのはそこですが、昔の先生の職人芸はほんとうに尊敬すべきですね(^^) ●症状 視力が低下したり、中心だけ物がゆがんで見えたり、中心だけ物の大きさが大きく見えたり小さく見えたり、中心だけが黄色く見えたり、中心だけピントがぼけたり、中心だけ暗く見えたりします。 ●標準的な経過 悪い病気ではありませんので、標準的には6ヶ月ぐらいで自然に治りますが、10%ぐらいの方に後遺症でゆがみが残ったり、なかなか水が引かなかったり、繰り返したりして視力障害が永久に残ってしまうことがあります。これをなんとか避けるのが大事と考えます。 治療 以前はレーザーで問題が起こった部分を焼いて水漏れを止めていた時期もありましたが、当院では最初からこれは行っておりません。確かにレーザーを打つと水は止まるのですが、時間がたってからその部分が視野欠損になって、しかも拡大してきますので、「治療してもらったときは速く治って先生に感謝したが、数年経ってからレーザーの影響で中心部が見えなくなってしまった」と嘆いている人が世の中に数多くいらっしゃるからです。 当院はレーザー治療を非常に得意としておりますが、だからこそレーザー治療のメリットもデメリットも知り尽くしております。レーザーは決して中心部に打つものではないと考えます。数年、数十年後を考えて治療するのが真のプロのテクニックと考えます。 決まった治療方法はまだ確立されておりませんが、当院ではいろいろと考えております。お困りの方は一度受診していただければと思います。 一つだけ、ここで案内しておきたいことがあります。 中心性漿液性網脈絡膜症は原因不明ですが、 ●30代、40代、50代などの、ある程度の年齢でなる ●ほとんどが男性である この事より仕事による精神的肉体的ストレスが原因とよく言われますが、そんなにストレスはないけどなぁっていう方も多いです。逆に、ストレスの全く無い大人なんていないわけで、自分だけストレスが原因と言われても・・・ですよね。 私たちは、経年変化や仕事による黄斑部の疲れの蓄積、すなわち、黄斑部のストレスの蓄積が原因と考えます。なぜ黄斑部が疲れるかというと、網膜の許容量に対して光が今までのトータルで当たりすぎというわけです。 なので、 ●パソコンのやりすぎなど、強い光を見すぎる生活をなるだけ制限する ●外に出るなど強い光を浴びる場合はサングラスを装用する。 などが大切と考えます。 特に我々現代人にとっては、パソコンは深刻な問題です。なので、私や鄭先生は、パソコンをやるときも必ず眼の保護用眼鏡をかけています。みなさんにもオススメです。 眼の保護の為に、どんな眼鏡をかければ良いのかわからないという方がおおくいらっしゃると思います。私たちは、自分たちで自分が使いたい眼の保護用の眼鏡を開発しています。ここをご覧下さい。 mail: 鄭医師 mtei@y2.dion.ne.jp (網膜硝子体専門医、横浜相鉄ビル眼科医院 火曜日担当) |